みなさんは若い頃の忘れられない思い出ってあったりするでしょうか?
友達と楽しい時間を過ごした思い出、悔しい思いをした記憶、何気ない日常なのに鮮明に憶えている場面。。。。
みんなそれぞれあると思います。
僕は今44歳ですが、若い頃のそういった記憶って、この年になると「時間」という絵の具で綺麗に染まって見えたりするものだと思います。
今日はそんな話。
・今振り返っても恥ずかしい私の若い頃
私は20歳の頃上京し、音楽学校に通いながらバンド活動をしていました。気の合う仲間と4人編成のバンドを結成し、ロック寄りのポップスに民族音楽の要素を取り入れたような音楽をやっていました。
はっきり言って自信がありました。
当時私は自分が「世界一うまいギタリスト」「独自の世界観を持ったスーパー作曲家」だと本気で思っていました。
だから、バンドをやってライブを重ねていくうちに自分たちの音楽感が世の中に広まり、やがてそれは大きなムーブメントとなり、スターダムをのし上がっていくのだと信じて疑いませんでした。
バンドのメンバーも、それ以外の友達も学校の先生も「お前なら成功できるよ!」って私を応援してくれました。
私はそれを「当然だろ」みたいな感覚で受け止めていました。
今思えば、思い上がりも甚だしい、いわゆる「イタイ若者」そのものでした。
・天狗の鼻を折られる
あるとき、東京下北沢でオープンしたばかりのライブハウスに出演させてもらうことがありました。
すごく頑張って友人や知り合いにチケットを売り、たしか私たちのバンドを見るために30人くらいは集まってくれたと記憶していますが、ライブが始まると他のバンドのお客さんも相まってフロアには100人くらいが手拍子してくれたりして盛り上がってくれました。
今日のライブはとてもよかったな
って思っていたのですが、その後ライブの精算の時にライブハウスの事務所でオーナーの方と話したとき、
自分たちのバンドについてメチャクチャダメ出しされました。
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バンドとしての一体感がない。ボーカルの歌唱力が低すぎる。全体として練習不足。これじゃ客はつかない。などなど、これでもかってくらいクソミソに言われたのをとても憶えています。
今の時代ではそんなことはほとんどないと思いますが、当時はライブハウスのオーナーがバンドのサウンドやパフォーマンスの仕方についてガンガン口を出してくるのが当たり前でした。
(この「ライブハウスのあり方の時代変遷」についてもいずれ詳しく取り上げます)
家に帰った僕たちは打ち上げがてらみんなで缶ビールを飲みながら
「あのオーナーは何もわかってないな」
みたいな悪口を言いながら盛り上がりましたが、私は内心とてもショックでした。
・出口のないバンド生活
今まで学校という箱庭でチヤホヤされていた私はそのライブハウスのオーナーからの激励(!)に対して素直に受け入れることができませんでした。
しかし、それから1ヶ月ほど経って別のライブハウスでライブをしたとき、そこのオーナーからも(表現は柔らかかったけど)似たようなことを言われました。
あのとき下北沢のライブハウスのオーナーに言われたことはきっと正しかったんだなと、そのとき思いました。
そしてなによりも、お客さんを全然呼べませんでした。
最初は遊びに来てくれた友人も2度目は来てくれませんでした。
多分バンドをやったことがある人は皆同じ経験をしたことあるよね?
と今となっては思いますが、気づけば自腹を切ってスカスカなライブハウスで演奏する、目的を見失ったゾンビのようなバンドをやっていました。
それでも曲には自信があったから簡単に辞められませんでした。
いつか誰かが認めてくれると思っていました。
次のライブハウスではどっかのレーベルの偉い人がたまたま見に来てて、そして気に入ってくれて一発逆転だ!って本気で思っていました。今思い返しても「んなわけあるか!」と過去の自分をツッコみたくなるほどのイタさです。
・バンド解散とその後
その後2年くらいバンドを続けて、そこそこ大きなライブハウスでライブをやらせてもらったり、オーディションで結構いいところまで行ったりと、それなりにいい結果となった時期もありましたが解散しました。
私はピン芸人としてギター演奏のお手伝いをしたり、自分名義で作曲活動をするようになりました。
あれから20年以上経った今も私は音楽業界の末席を汚す役割として同じような仕事をして何とか生活していますが、当時のバンドメンバーや音楽仲間が今どこで何をしているのかは全くわかりません。
私の若い頃の失敗は、満を持して身も心も捧げたバンドがうまくいかなかったこと、仲間たちの期待に応えられなかったこと、その結果貧乏で生産性のない数年を過ごしたことです。
・そして過去は色彩とともに
今思えば、当時の私に足りなかったのは自分の演奏技術でもなければ作曲のセンスでもなく、バンドをひとつの事業体として売り上げを上げていく概念、すなわち経営センスとマーケティングスキルでした。
そう素直に思ったのは、井の中の蛙だった私がバンド活動を経て、多くの仲間やお金を失い、地獄のような時間を過ごした時期があったからです。
また別の機会に詳しく書きますが、当時の私は本当に貧乏で、貧しいがゆえに多くの失敗を経験してきました。
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でもそれは悪い面ばかりじゃなくて、そんな苦しい時期があったからこそ精神的に強くなり、思考はより深くなり、行動の大切さを知りました。
当時の私はバカではあったものの、本気でした。
きっとそれがその後に別のチャンスを与えてくれたのだと思います。
そして今思えば、私という人間を形成する上で必ず通らなければ行けなかった道だったと思っています。
もしそうであるならば、どんなにひどい過去であったとしてもなんとなく「いい思い出」に感じるから不思議です。
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もし、今20代でバンド活動や事業活動をしている人がこの記事を読んでくれていたとしたら、
「どんどん突き進んで、どんどん失敗してほしい」
と伝えたい。
本気で取り組んで、沢山を人を巻き込んで、それでも失敗して、そして人は成長していくものだと私は思います。
失敗のプロセスやその後の学び、新たな行動、新たな仲間。
これらは金では買えない貴重な財産です。
取り返しのつかない失敗なんて、世の中には存在しないと、私は思いますよ!